リレー小説「僕⇒俺⇒私⇒そしてボク」
●原文 神村サイトさんのページに飛びます
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// 僕⇒俺⇒私⇒そしてボク 第八話
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// 執筆者 神村サイトさん
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起床してしまった。
だるい体をのそのそと動かし支度をはじめる。
学校には――行かないと。
今休んでしまったら
もう二度と歩けなくなってしまう気がしたから。
// 僕→俺・私
煙草の残り香、要はヤニ臭さ。
それを鼻の先から消したくて、
あんな性格破綻女に振り回されてる場合じゃないのに。
その匂いをとにかく抹消するため、何かしよう。
とりあえず、上半身の服だけは脱いだ。
その服を洗濯前のカゴにまだ洗ってないがために
濡れていない衣類やタオルの上に濡れたそれを放り出す。
濡れたときはその濡れた服を着ていては駄目。
それが頭でわかっていたからとりあえず脱いだ。
でも嫌な臭いが、友人たちが、
気になりすぎて、タンスの衣類を出すのさえ億劫だ。
とにかく消臭剤のスプレーをかけまくり、ほとんど
使い切ったころには倒れこむようにその場に眠り込んだ。
// 俺→オレ
俺はそのまま家に帰った。
リョウの家、そのままにしてきたけど、
もう帰ったのかな……。
どうしてリョウのこと考えてんだろな……。
カオリさんのことを思い出そうとした。
でも顔が浮かぶ寸前でそれは止まった。
双方に若干の恐怖を抱いていたのに気付いた。
リョウとカオリさんの事におびえている。事実に。
向こうに山北が見えた。
「おう。海堂か、どうしたこんなとこで?」
山北は少し肩が雨でぬれているようだったが
どうということもなしに、気さくに話しかけてきた。
「…………」
少し目を見開いて、ばれないように緩めた顔を作った。
「遊びにいってたんだよ。でも用があるとかで
帰れとか言われちゃってさ。振られちゃったわけ。
だからこーして、散歩がてら帰ってんの」
もう少し短くまとめて言うべきだったか。
ばれなかったか。何が? ばれるって?
「ほ〜ん。オレもお姫様お世話して
お家に帰るとこだぜ。そんじゃな」
「あ、ああ」
あいつの後ろ姿は振りかえらなかった。
「俺は……」
その眼は決意が滲んでいた。
// 私→?
傘をさして歩く。一刻も早く帰りたい。
濡れたのは乾いた。肌寒いのは
気持ちがそうだからだ。きっと。
家路を三分の二ほど来たあたりで女の子が目に入った。
通りすがりは目に入らなかった。
なのにその子だけは目に入った。
でも……。
人の本質はなんとなく雰囲気で分かるものだ。
あの子は……。
吐き気がするくらい気持ち悪い人間に思える。
思わず少しふらついた。
精神的にもふらついていた私は、
歩く姿勢を崩さないよう慎重に歩みを進める。
なんだか封筒をもっていた。一瞬覗き込んだかと思うと
にやりと気色の悪い笑みを浮かべた。
こんなにはっきりと雰囲気とか仕草が
嫌すぎる人間にあったことがない。
体は正直に脳に伝える。「嫌だ……」と。
すれ違った瞬間、彼女から雨の日なのに
香水の気配を感じ取った。
一体どれだけ香水を振り掛ければ
雨に打ち消されず香ってくるのだろう。
しかもその香水の香に違和感を感じた。
匂いが混じってるような……。
ぐらぐらとおぼつかない足取りで家へ向かうカオリ。
それをコアミはじっとりとした目で追っていた。
「事務所を探そうかと思ったけど……ラアッキイィ……☆」
カオリはぼんやりとした頭にひっそりと
浮かんでいた考えを手繰り寄せていた。
「私……」
カオリは家までの少しの距離を背筋を
目いっぱいのばし、歩くことにした。
// 僕⇒親友×2
「はあはあ……」
顔が少し赤らんでいる。鏡なんかなくてもわかる。
僕は風邪を引いたのだ。
朝ご飯は食べてない。食欲がないのも確かだが、
お腹が減ってるのも確実だ。
お昼は抜くしかないか? 今は食費がやばい。
授業中、バイトでもしようか。と考えた。
ちゃんと事情とかがあれば
うちの高校はバイトができた気がする。
そんなことを考えてる授業中。4時限目までに4度ほど、
保健室に行くかどうか問われたが空返事をした。
昼休み。シンヤ君といつもしゃべってた場所に行った。
誰もいない場所に腰かける。
どうしようもない。僕はずっと黙ってその場に居座り続けた。
チャイムが耳に届く時刻。しょうがないから立ち上がった。
どうにもふらつく。今までにないほどの熱さを感じる。
(もう、帰ろうかな。早退の旨は明日先生に説明しよう……)
「…………」
(2人に会えなかった。いや、会わないように
目立たないように、大人しくしたからか? 無意識に
2人を拒否るなんて、僕、すっごい嫌な奴だなあ……)
僕は昼食が入ってないのは承知の上でなんとなく
この場に持ってきてたカバンを手に学校を後にした。
「はあはあ……。もしかして休み? どこだ……。
どこだよ……。俺は言わなくちゃいけないことが……」
「はあっはあっ……。図書室、教室。
昼休みいなかったなあ。……どこだろお?」
「……人がせっかく……」
「授業ほったらかしでさがしてるのにい〜……!」
「ああ! どこだあーーー!」
「もう! どこなのお!!」
どたあっ!
「うおお!」「きゃあああ!」
2つの悲鳴が飛び交う。
「あ、か……カオリさん?!」
「あなた……カイ大佐……じゃなくて、えーと」
「シンヤ……です」
名前を言ってくれないことに少し落胆しながら答えた。
顔がほてってたまらない。でもとりあえず
現在の目標「家に帰りつく」に向かって帰り道を進む。
僕はいつだって頭の中で妄想するだけ。
何も進展なんかしてないんだ。
運命は変えなきゃ替わらないのかな。
「あ! あれって……♪」
声の主はリョウがいる場所がちょうど見える
唯一の位置に偶然いた。声の主はひどく上機嫌だった。
「シ、シンヤさんは授業中に何を……?」
作られた不思議そうな顔を目に捉え、
シンヤは答えた。彼女は俺を疑っているんだ。
「俺は……、友達……を……」
友達を探しに。というつもりだった。
でもなんか無理だった。
だからこの際だから俺の意思表示を全開。
そう、つまりフルスロットルにしてみた。
「俺の……、『親友!』を探しておりまああああす!!!」
「うるさっ」
ついつい突っ込んでいるカオリさん。
確かに今の俺はやかましかった。
「私も……、大切な人……とっても言わなきゃいけない人が
今日いなかったから……。でも、今日言わなかったら、
もう先延ばしはありえなくて、後にしたら
もう言えない気がして……」
しどろもどろにとにかく自分の言いたいことを
私はまとめてみた。結果からしてまとめきれなかった。
なんだか意味の分かんない言葉の
組み合わせになってしまったが、彼は分かってくれた。
「今やってる授業の残り時間は残り27分……。行こうよ。
言わなきゃいけないこと。俺もあるんだ。きっと、
探してる人は同じな気がするんだ。でさ、言いたいこと
いって全部終わったらさ、あいつのいないとこで勝手な
約束だけどさ、『3人』で楽しく遊べる関係になりませんか?」
腕時計を一瞥したあと彼はそうしゃべった。
敬語やため口の混じった混乱しているしゃべりかた。
私はその咄嗟に言ったような、
でも一部に元々用意してあったような決意のような。
それら全てが憎めないものだった。
彼が差し出した手を握り、ハイスピードで走り出した。
咄嗟の彼女の全力疾走に面食らって転びかける彼。
誰もいない特別教室前廊下。
二人の会話は誰にも聞かれない密談で、
全てが終わった時には3人で分かち合う秘密だった。
…………。
僕はかなり疲れていた。なんというか極限だった。
(もう少しで着くな……。はあ、疲れた。早く寝よう)
壁や塀とか、何かしらに捕まりながら歩いた。
その時僕は後ろから人が来る甲高いヒールの音を聞いた。
(後ろに人がいる。なんだか高飛車な歩き方だなあ……)
既に体全体が熱を持っていた。
少し早歩き。自宅はそう遠くはない。
自宅までもう少しといったところで、少し駆け出した。
誰にも僕を見てほしくなかった。早く家に帰りたい。
アパートの裏手に回った。階段が見える。人気はない。
通勤通学にいい感じの立地だからか、昼間は留守か、
または夜働く人が寝てるくらいだ。
「ふう……」
1階の住人の入り口が奥に見える階段。
その手前で壁に手を付き僕は一休み。
「……」
少し僕は三角座りをした。
頭に考えを巡らせてみた。
……どうしてこうなったんだ……?
冷静にかつクールに、そして時に情熱的に、
状況を確認してみようか。
まず、シンヤ君を部屋に泊めた。
ここではテンションはとどまるとこを知らなかったわけだ。
そして、風香……カオリさんからお誘いのメール。
ふんふん、なるほど。
そして、日にちがかぶってた。あちゃー。
「……」
全面的にこれは僕が悪いんでは……?
これは、これは……、うーん。まずい。非常に。
僕の不注意でしょうが! 完璧にさ!
僕が嫌われ続ける分にはまだいい。
二人の……シンヤ君とカオリさんの間に……
なにか嫌なのが残るのだけは……駄目だ。
むしろ、誤解を解いた暁には二人には幸せに……さ。
あははははははは…………。
自分にとってのハッピーエンドフラグを
無意識に全力で回避する僕。
いつ消えたかわからなかった。
左肩の痛みが消えていた。昨日転んだやつ。
きっと、これと同じように、誤解も、
みんなが抱えてることも消えるよね……。
熱を持った体はもうオーバーヒート寸前だった。
人間は42度を超えると内臓とかタンパク質が
固まりはじめるらしい。怖っ。
俺はきっと勘違いしていたんだ。
突然の事だったから、リョウの家にカオリさんが
来たってだけで……。俺最低だ。
リョウのこと何にも知らなかったくせに。
勝手にカオリさんがとられたんだと思ってた。
あいつが実際にはどんな暮らししてるかとか、
ベッドの下にあったあの本とか。
実際行って、楽しくあそんで、寝て、
それでリョウに迷惑かけるまで。何も知らなかったんだ。
そんな友達。意味ねえよ。
だから俺はリョウを見つけたら、
……嫌われてたら――そこまでだけど。
意味のある友達になりたい。
少しづつ、私の手に移る彼の体温。
私とシンヤ君はまだ手をつないでいた。私は引っ張られていた。
よく考えたら分かった。
男同士でお泊りしていて、
それを誤解しちゃうっていうのは……。
ちょっ――恥ずかしいっ……。
たとえ、本当に愛し合っていて(←暴走気味)、
泊まってたとしても! 見た瞬間少しだけど
泣いちゃった。とか……。
本当に……私……。
「腐女子自重しろ!」
って感じになってるじゃない!!!
よく某動画サイトで見る感じにィィ!!
でもなんでか私は――何で誤解なんかしたのだろう?
それほどまでにリョウ君が
大きい存在になっているのかも知れない。
……リョウ君に会ったら、なんて言おう。
言おうと思って考えた言葉が
――どんどん泡となって空に浮かんでは消えていく。
「リョウ君……」
些細な声にシンヤ君は気付きそうになかった。
// 僕→!!!
「いい加減、部屋に帰ろう」
そう思い、階段のところから離れようと立とうとした。
今の僕は色々感覚が鈍ってるので、
後ろからの気配に気づかなかった。
「よい……っしょ、っと」
頑張って立ち上がった僕の努力を
水の泡にする衝撃が体に走った。
「えーいっ★ きゃはははっ!!! 倒れてやんの!」
狂おしいほどの腹立たしさを含有した声とともに、
僕は地べたにダイブした。
「へぐっ!」
「な、何?! 一体誰……」
誰か探ろうとする僕の探究心は一瞬にして満たされた。
――小沢さん。
だった。なんで、また僕の家の前でこの馬鹿女に会うんだ。
「なんで君が……」
「だってえ、学校であんた見つけて、
面白そうだからついてったの」
「ストーキングじゃん。それ」
いきなり手のひらをヒールのかかとで踏み潰しにかかられた。
「うああ! 危なあっ!」
間一髪で手を引く。声だしたらくらくらしてきた。
「あんたさあ、金ってバイトして稼いでんの?」
「……両親……から貰ってる」
「いつ?」
「なんで……そんなの……教えなきゃいけないの?」
「そりゃあもちろん」
「あんたの金が入る日にコアミ、徴収に来るからに
決まってんじゃん? あんた、畜生なの? 人でしょ?
さっさと気づいてよ。面倒くさい男女ね」
(君よりは頭いい。絶対に)
その言葉を飲み込み、僕は違うことを言った。
「……なんか理不尽じゃない? バイトして稼いだほうが
いいと思うよ。ほら、働く喜びも知れるよ。
僕、今さ、風邪で死にそうだから、帰りたいんだけど……」
「あのさあ……、ほんっと、知能レベルの低いやつね。
コアミはそんなだるいことしたくない! って分かるでしょ?」
こいつ、話聞いてないな。
「風邪」の下りを耳に入れてほしかった。
「あの、僕ただでさえ、今月バイトしないと間に合わないんだ。
お願いだから帰ってよ。」
がん!!!
ふいに手のひらへのヒールの鉄槌がくだされた。
「あんたってさあ……。
真正の馬鹿あ??? うっざいんだけどおお??」
「うぐう…………」
悲鳴さえままならない僕は現在なぜか彼女と対峙していた。
というより一方的に見下されていた。
「あはは♪ あんたダイジョウブ〜? なんか苦しそう〜☆」
彼女はぐりぐりと僕の手のひらを踏みにじり続ける。
ちなみに苦しそうなのは風邪だからです。
マジで話を聞いといてください。
「この前さあ、ちょおラッキィだったの!
Kasumi様の事務所探す方法考えてたらあ……
自宅発見! しちゃってえ!」
「い……」
「え? 何? はっきりしゃべってくんない?」
僕はいい加減腹が立った。いくら普段大人しい僕でも
これはむかつく。話を聞けよ! 君!
もしかしたら今からやってしまったことは、ムカついた僕が
あの娘を仕返しに怒らそうとしただけだったかもしれない。
というわけでここぞとばかりに激昂してやった。
「いちいち語尾あげてしゃべってんじゃねええ!!!
うるさいんだよお!!!」
彼女の厚化粧の表面からでもわかるくらい
ビキビキと青筋が立っていた。
本当に色々考えられなくなって、世界に絶望していたところに
彼女が来た。ただでさえ、ささやかな苛立ちが育っていたころに。
僕はもうひと押しした。しかし次に僕が言ったことは
見たまんまの事実である。
「怒りすぎかな? 面の皮が突っ張って厚化粧が
少しヒビはいってる……ぜ!」
とにかく普段の僕の口調では迫力がないので
さっきから頑張って口調を変えている。
さすがに「ぜ」とつけるのは慣れなかったので
ぎこちなくなってしまった。
……やっぱり「ぜ」は不必要だった気がしてきた。
いや、そうに違いない! 超後の祭り!
「な……なによ……。何よ。
なによなによなによなによ。何よお!!!
ふざけないでくれない?!!!
子猫じゃなくて今度はあんたを殺そうか? ……♪
そこまで口答えするのは死んでも良いってことでしょ!???
あんたのせいでコアミは不幸だったの!!
シンヤに振られたのはあんたのせい。
そして今度はコアミに大声で口答え。殺すわよ?」
「いや、それは殺人罪でしょ。
君、何かおかしいよ……! 頭とかさ。
それといい加減僕帰りたいんだけど。
君なんでそんなに僕が嫌なの?
勝手に僕の生活を荒らさないでよ! 帰って!!!
本気で猫殺しするような人にお願いなんて
聞いてもらえるわけないとは思ってるけどね……。
でもさあ、一つだけ言っておくけど、
傷つけた分、君に帰ってくるんだよ。
あの子猫も、僕のことも。
その証拠に、荒れた性格に反映して
ぼろぼろになった肌が化粧の上からでもわかるよ」
精一杯口答えしてみました。もう、無理です。
体力的にも、重圧的にも、小沢さんにここまで言えたら
「もういんじゃね?」って気持ちになってくるなあ。
「…………!!! むかつく……。なんで男女が偉そうなの?!」
ダッシュで逃げて鍵かけよう。そうしよう!
さて、どのタイミングで逃げるか……。
「むかつく……むかつくゥ…………」
逃亡の算段で頭がいっぱいな僕は小沢さんが
いつの間にかしゃがみこんだのに
気づくのが遅れた。……何をして……。
膝を立てて走って逃げる態勢の僕に向かって、
小沢さんは叫んだのと同時に利き手を振りかぶった。
拳は既に後ろに振りかぶりきっていて見えない。
「むかつくのよおっっ」
僕の顔の真ん前に来たとき何を握っているか見えた。
日陰の中にいる僕たちを指さすかのように
鋭く届いていた太陽光がそれを反射させた。
っ……!
彼女の手のひらにあったものは言いようのない音で
僕の皮膚を抉り、勝手に僕の中に入ってきた。
流れる。流れる。とめどなく。赤黒くリアルなA型が。
どうしようもない僕はしょうがないから手を患部に当ててみた。
肉が出ているところを触ったらしく、
ヒリっとする感覚を味わった。
(えげつない凶器だったなあ……)
僕が見た時、それは間違いなく大きなガラスの破片であった。
石ころのほうがよっぽど地面に転がっているのに流石、小沢さん。
「あははは……コアミを馬鹿にしたのが悪いのよ?
というかあんたは生まれながらにもうダメな奴なの。
コアミ、知ってるの……♪ あんたより、
あんたの両親からコアミはいっぱい小遣いもらってたの。
あんたが失望した目でコアミに差し出された
プリン見てるのも……ね♪ あんたのおやつだったのを、
なんでかコアミが貰ってたのってさあ……」
『あんた、隣の家のコアミより、
親から愛されてなかったんじゃないのお??♪』
その刹那。僕の体に思い出したくない、記憶の旋律が走った。
「あ……」
僕は壊れた。
壊れた「気がした」ではなく、壊れたんだ。
馬鹿女の声が遠く聞こえるようになった。
「きゃはは★ マジざま見ろって感じ〜。また来るから。
バイトでもしてお金稼いどいてね♪ あ〜、せいせいしたあ。
もし、またこんな風に生意気聞いたら、
苦しい方法で制裁するから、覚悟しておくことね♪」
きゃはははは〜という笑い声が頭蓋骨に反響して消えていく。
「…………」
目に光が消え、「僕」が消えた。
無表情のまま、立ち上がり、無意識にバランスを取りながら歩く。
頭の中には洗脳されたかのように
一つの考えしか浮かんでなかった。
「僕」という人格は塗りつぶされた。
塗ったペンキを無くすのはすごく大変で、手間がかかる作業だ。
額からは、相も変わらず、
外へ向かう血の流れは終わる気配がなかった。
// 俺と私
「あの〜……」
シンヤ君は立ち止まって私に言った。
「もしかして、学校にいないんじゃ……」
「たしかにここまで探していないのは……、
その可能性あるかも……。家にいるのかなあ……?」
「あいつ、今バイトしてないし、
家以外に行くとこないと思います。俺も。」
「それじゃあ……、今日は学校まだあるし、
早退するのもあれだから……、明日さぼる?」
「えっ? さぼり? ……いや、そうですね。リョウのこと、
すげー心配だし。もうすぐ、今やってる授業も終わりますし、
今日はとりあえす別れますか。それじゃあ、明日9時に、
リョウの家の近くの公園。ってことでいいですか?」
「大丈夫。それじゃあ、そのときにね!」
俺の手を離れた彼女の手。もっとつないでたかったなあ。
女の子成分が離れていく……。
彼女が愛おしかった。触れたかった。
でも今、彼女と同じくらいまでに、
リョウの株価が急上昇だった。
リョウを探すために……彼女と手をつなぐことが簡単だった。
「手をつなぐ」
重要なことだ。でも、それさえ霞むくらい、大切な友達。
いや、「親友」だ。
// 僕→僕???
「あった。……これ」
さっきの光のない目ではなくなった。
その代り、違う人間の光が目にやどっていた。
傷は丁寧に手当した。安静にしてればいいと思われる。
今見つけた服をタンスから出し、今の血が少しだが
付着した学生服を脱ぎ捨て、代わりにタンスの奥に押し込んだ。
その出した服を着て、ソファにおっかかった。
「ふう……」
// 僕→僕の気持ち
僕はさっきのコアミちゃんの言ってたことで何かが死んだ。
「僕」は死んだ。もう直せないかも。戻れないかも。「僕」に。
僕は悩む時、妄想する。両親や、シンヤ君のことを悩む時。
妄想して、し続けて、ついには、僕の心に棲みついてしまった。
もう一人のボク。
「 綾 〜アヤ〜 」
どうしようもなく、さいなまれ、悩んできた、僕。
誰かに助けてほしかった。だれでもいいから。
親は頼りにならない。
僕以外の、女の子しか求めてない親なんか。
頼りになんかしてはやらない。
「僕」は……終わりだ。
壊れた者は戻らない。
// 俺+私⇒僕???
9時2分。俺は装備した腕時計を見る。
「シンヤ君! ごめんなさい! 遅れたかな?」
元気よく公園に飛び込んできた。彼女は私服。
俺の名前も憶えてくれたみたいだ。
私服と名前呼びというダブルコンボで
今なら失神できる気がしたが、気のせいだった。
「大丈夫だよ。ほとんどぴったりだって。んじゃ、行こう。」
俺たちは歩き出した。
それぞれ、ちゃんと言いたいことを持って。
――ピンポーン。
チャイムを俺の手が鳴らす。彼女が俺を見て頷く。
「リョウ……っ」
小さな声で俺は呟いた。彼女には聞こえたようだ。
「きっと。仲直りできるよね」
優しく、柔らかく微笑んだ彼女を見て、
俺は少し緊張が解ける。
今はまだ2人が緊張して来たるべきだれかを待つ世界。
リョウ、お前が来て、3人の世界になって、
やっと完成する。皆でカラオケにでも行こうか。
終わったら。
――ピンポーン
チャイムが聞こえた。
眠っていたみたい。眠い目をこすり、
チャイムの主の期待に答えた。
「リョウ……でてくるかな……」
「きっと、出てきてくれるよ。もし留守でも、
公園で待ってようよ。アパート見えるし」
そう会話してる間に、パタパタと
あわてた足音が聞こえてきた。
「あ! きっとリョウ君! 良かった……」
2人は安堵のあまり、言いたいことを
忘れないように気を付けた。
ドアの前で足音が止まる。その瞬間
2人同時に声を出していた。
「リョウ!」
「リョウ君!」
運命の ドアが開く。
「はーーーいっ☆!」
「「え?」」
二人してハモる。目を丸くした。
常人の反応としては当然だろう。
だってさあ……。
「リョウ……君? ……それって……」
震えてんのか何なのかよくわからない声で彼女は言う。
「どうしたの? あ、家入る?」
何故か、何にもなかったような声だ。
しゃべり口調だ。しかし声が少し高い。
「あ……、ああ、入らせてもらうか……。
それよりも何よりも突っ込みたいことが俺はある……」
とりあえず家には入った。くつろぐ彼達。
「でさあ、お前の見た目を突っ込みたい」
リョウの姿は……コスプレ服だった。
まあ、百歩譲ってそれはいい。
肩にあしらわれたフリル。短いスカート。あざとい白の
ニーソックス。ゲームキャラ「ナタリィ」のコス服。
あれえ? おかしい。何かがおかしい。
違和感の存在には気づきたいのだが……、が、しかし。
似合いすぎて違和感をなかなか発見できない。困ったものです。
彼にいったい何があったのか!?
それはこの場にいるシンヤとカオリのしばらくの
テーマになりそうだった。
「……いや! これはまずいだろ! なんていうか!」
俺は誰に言うでもなく、叫んでいた。
// 執筆者 神村サイトさん
あとがき(神村サイトさん)
えーと、なんていうか。とりあえず。全力でごめんなさい。
2,3か月位に及び、放置してたにも関わらず、
こんなんなってスイマセン。
終わりそうなとこを、変な盛り上げ方しちゃって。
もうどうしましょう。僕というやつは。
でも、なんかクライマックスフラグですよね!?
一応!(たぶん)
なんか厨二ですし、血とか、諸々。本当に許してください。
ちなみにリョウに着せたコスは趣味です!
なっちゃんが本気で好きなんです。
あと、リョウ君の血液型勝手に決めてごめんなさい。
それとシンヤとリョウって違うクラスでしたっけ?
同じクラスだったらこの話どうしてくれようか。
全体的にホンマすいません。
……若気の至りということで。
もう色々駄目です。特にこの言い訳……。
謝罪ばっかで、もうごめんなさい!
後は丸投げするので美樹さん、どうかお願いします!
昔のゲーム並みの超展開でした。今回は。
// こっから先はたつにいの感想
とっても超展開ですね! 読んでてワクワクしましたよ。
リョウは血液型A型でいんじゃないかな?
シンヤとリョウは別のクラスだと認識してます。
勿論カオリも別クラスで、カオリと山北はクラスメートです。
山北チョイスの変装したカオリをコアミが
モデルKasumiと勘違いする下りとか秀逸です。
森岡美樹さんがここからどのように話を展開していくのか楽しみです。
勿論、そのあと来るであろうムチャぶり展開を執筆するのも楽しみです。
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●第九話へ進む たつにい
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