リレー小説「僕⇒俺⇒私⇒そしてボク」
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// 僕⇒俺⇒私⇒そしてボク 第九話
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// 執筆者 森岡美樹さん
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いつもなら教室の机で、
数学の授業をうけているはずの時間。
テスト前の大切な授業を、
大切な友人のためにサボって俺はここに来た。
けれどそのにいた友人は、
いつもとはどこか違っていた。
// 俺→ボク
(……って言うかどこか違うとか
そういうレベルじゃねぇよ!!!)
俺は自分の心の声に心の中でツッコミを入れた。
けれどそんな不安定な俺をよそに、
目の前のリョウ──ゲームキャラの服に
身を包んだ“彼”はにっこりと笑っている。
彼が着ているのは、俺も借りたことのある
彼が大好きなゲームの女性キャラのものだ。
純白のスカーフと、短いスカート。
それに加えて、彼の華奢で白い身体。
毎日のように会っていたはずなのに、今の彼は
どこか別人のようで、でも前にどこかで会ったことが
あるようななにか懐かしい感じがした。
「あっ、そうだなんか飲む?
……って言ってもお茶くらいしかないけど☆」
なんてことを考えながらボーッとしていた俺に、
弾けた口調の彼はそう言うと
奥のキッチンへと駆けていった。
明るい色のスカートが、ひらりと翻る。
(あ……!?)
そこで、俺は全てを思い出した。
姉ちゃんに頼まれてしぶしぶ行った、
近所のコスプレイベント。
そこで見かけた、可愛い女の子の事を。
その子は、白いレースのスカートを
翻してこっちを振り向いてくれた。
黒いつぶらな瞳と、化粧なんてしなくとも
十分美しいであろう白く輝く肌。
そしてその場にいた誰よりも、女の子らしい仕草と声。
それはまさしく、今現在のリョウのものだ。
(あっ、え、いや……嘘だろそんな……)
俺はもう、隣にいるカオリさんのことを
気にかける余裕すらなくなっていた。
// ボク→ボク
僕の中に住み着いた、もう1人のボク。
そのボクが、表に出てきてしまった。
裏が表に、表が裏に。
もしかしたらもう、『僕』は戻らないかもしれない。
けれどボクは嫌なんだ。ボクは僕の一部なのに、
いつまでも僕の影に隠れていることが。
もしかしたら誰も、『ボク』を
受け入れてくれないかもしれない。
けれどボクはそれでもいい。
誰がなんと言ったって、ボクは僕の一部だから。
// コアミ→コアミ
“あの”腹立たしい出来事があった次の日。
恋亜魅は一軒の家の前に立っていた。
ウザい雨の中で偶然見つけた、憧れのあの方の自宅。
白い塀に付けられた表札には『美芳』の文字。
「んっふふふ……Kasumi様の本名……
しかも家まで分かっちゃうなんて超ラッキーじゃん♪」
恋亜魅は肩にかけたバッグから携帯電話を取り出すと
目の前の家を写真におさめ出した。
平日の午前、人通りの少ない路地に
パシャパシャというシャッター音が響く。
ちなみに良識のある人ならば知っていて当然だが、
本当は人の家を勝手に写真におさめるのは違法なことなのだ。
けれど恋亜魅はそんなことお構いなしに、
キレイに撮れた写真を見ながらにんまりと笑う。
「んー……やっぱこの時間は留守みたいね。
また夜に来よっと♪」
閉じられたカーテンを見上げ、
パタリと携帯を閉じてから恋亜魅は歩きだす。
(お仕事かもだから仕方ないケド……。
ホントは少しでも早くKasumi様に直接お会いして
コアミも同じ事務所に入れてもらいたいのにぃ!)
唇を尖らせて、恋亜魅は
さっき閉じたばかりの携帯を再び開く。
そして歩いている時の手持ち無沙汰を解消するために、
そこからインターネットにアクセスする。
今流行りの、短い呟き専用ブログ『Tubuyakitter』の
自分のページにログインにすると、
長く伸ばした爪で文字を打っていく。
『kasumi様のおぅちはっけーん♪
赤い屋根がかゎぃぃ(´艸`*)』
決して万人から愛されることはないであろう文面と、
添付された写真。
重ねて言うが、芸能人の個人情報を
無断でネット等に上げることは当然違法なことだ。
良識ある人なら知っていて当然だがな。
「はーあ。今から夜まで何しよっかなー……」
小さな画面に視線を落として歩く恋亜魅。
その足が、比較的人の多い
大通りの交差点に差しかかった時だった。
「危ない!!!」
「え? ──!?」
誰かの声に驚き、恋亜魅が携帯の画面から
顔をあげた時はもう遅かった。
赤く光る信号を目前に、キーッというやけに響く
ブレーキ音と横から迫る白い光に恋亜魅の身体は包まれた。
厚く塗られた白いファンデーションと、道路脇の白線。
そこへ似つかわしくない赤が、飛び散る。
(え、なに、よ、これ……
肩が痛い、膝が痛い、頭が痛い腕が痛い足が痛い!!!)
恋亜魅が車に轢かれたと自覚するまで、大分時間がかかった。
目の前に転がる、画面にヒビの入った愛用のピンクの携帯。
遠くへと走り去っていく、自分をこんな目に合わせたであろう
トラックらしき車。
(やだ、なに、なんでこんなに血が出てくるのよ!
やめてよ! キレイにセットした髪が台無しじゃない!
コアミはKasumi様に会ってモデルになるのよ!?
傷でも残ったらどうするのよ!!)
「きゃっ、どうしたの!? 事故!?」
「赤信号を渡ろうとしたのよ、あの子……」
遠巻きに見つめる人の声が、
ざわざわという音となって恋亜魅の耳に届く。
(ちょっと……なんであのガキ笑ってんの!?
何がおかしいのよ! 血がそんなに珍しい!?
コアミにこんなことしていいと思ってんの!?
コアミをこんな目に会わせていいと思ってんの!?!?)
──傷つけた分、君に返ってくるんだよ。
不意に、どこからか、あの男女の声がした。
周りのやつらの声は全然聞こえないのに、
何故かあいつの声だけは頭の中に鮮明に響く。
(うるさいわね! なによなによなによ!!
なんで誰も助けてくれないのよ!!!
ちょっとそこのおっさん! ケータイくらい
持ってんでしょ!? なんで見てるだけなの!?
救急車くらい呼びなさいよ!!)
声にならない叫びを、歯を食いしばって心の中で叫ぶ。
だが冷たい地面に段々と温度を奪われていく身体は、
指一本動かせない。
(なん、で、力が入らないのよ! なんで動かないのよ!!
なんでコアミがこんな目にあわなきゃいけないの!?
コアミが何したって言うの!?
なんで!? なんで!? なんで……!?)
「だれ、かぁ……」
恋亜魅の必死な声は、心配そうにこちらを見つめる、
だかしかし1人として助けの手を差し伸べようとは
しない人々の雑踏によってかき消された。
続く!
あとがき(森岡美樹さん)
……なんというかホント、ごめんなさい。
お2人の小説を読んでいたらどうしても恋亜魅に怪我を
負わしてやりたくなってしまったんです!←
ちなみに信也と香織が綾の家に行ったのと
恋亜魅が事故ったのは同じ日です。
後はお任せしまーす!(^ω^;)
// こっから先はたつにいの感想
どうもたつにいです。
アヤちゃん大進撃ですね。
男の娘パワーすごいです。
恋亜魅は一応、怪我して放置されてポックリだと
ラスボスいなくなるので、一応病院に搬送はさせる予定です。
ちょっとした置き土産を残してね……。
とりあえず任された! 時間見つけて続き書くね。
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