リレー小説「僕⇒俺⇒私⇒そしてボク」
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// 僕⇒俺⇒私⇒そしてボク 第六話
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// 執筆者 森岡美樹さん
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「おはよう」
扉の前で微笑む少女。
「ムニャムニャ……俺朝ご飯は和食派……グーグー……」
奥の部屋で寝ている少年。
2人の間に挟まれて、
僕はどうしたら良いのか分からなくなっていた。
// 僕→私
(もう、何でこんな大事なこと忘れてたんだよ僕の馬鹿!!)
僕は誰にもぶつけることの出来ない怒りを、
心の中で自分にぶつけていた。
後悔先に立たずとは良く言ったもの。
僕は今まさに、良く考えもしないで彼を
家に泊めたことと、良く確認せずに彼女を
家に招いたことの2つを物凄く後悔している。
(とっ、とにかく、シンヤ君が
家にいるってことをバレないようにしないと!)
僕は必死で考えを巡らせた。
僕は勉強もそんなにできるほうじゃないし、
頭の回転もどちらかというと遅いほうだ。
だが、今回は違った。
ビックリするほどすぐに、問題の答えが浮かんだ。
(……あれ? そういえばなんで僕こんなに悩んでるんだろ?)
そう、別に僕と彼は付き合っているワケじゃない。
僕と彼女も付き合っているワケじゃない。
彼は彼女が好きだけど、あくまでそれは片思いなだけ。
そう、良く考えれば悩む事なんて一つもない。ただ普通に、
「友達が遊びに来てるよ」って言えば済む話じゃないか。
(あはは、僕は何を悩んでたんだろ。馬鹿馬鹿しいなぁw)
これで全て上手くいく。
僕はこの時、この安易な考えによって
後々とてつもない後悔をするなんて思ってもいなかった。
もし過去に戻れるなら、この時の自分を一発殴ってやりたい。
きっとそんな勇気はないだろうけど。
// 俺→僕・私
「うぅ……味噌汁はやっぱり赤だし……っ!」
8時33分。
「うおっ、ビックリした……」
ワケの分からない叫び声で目が覚めた。しかも自分の。
どうやら朝ごはんの夢を見ていたようだ。
「あー……ここどこだ?」
辺りを見渡すと、見慣れない家具と家電。
だがすぐに昨日のことを思い出す。
(あっ、そうだ。リョウん家に泊まったんだった……
つーかリョウはどこ行ったんだ?)
言っては悪いが、そう広くはない部屋なので
近くに人気がないのはすぐに分かる。
トイレにいる可能性も考えて、顔を洗うついでに
覗きこんでみたが、やっぱりそこには誰も居なかった。
まぁ覗きこんじゃったから居られてもこまるけど!
などと馬鹿なことを考えていると、入り口のドアが
少しだけ空いていていることに気がついた。
耳を澄ますと、リョウの声ともう一人。
恐らく女性のものらしき声が聞こえてきた。
(やっべぇもしかしてお隣さんかな?
昨日の夜騒ぎ過ぎたか……)
それならリョウ一人だけに謝らせるわけにはいかない。
だって騒いでたのはほとんど俺だから!
「あっ、あのすいません!
騒いでたのはこいつじゃなくて俺なんで……っ!」
ドアを勢いよく開けると、そこには
予想していたようなオバちゃんは居なかった。
が……。
リョウの肩越しに見たものは想像を絶するものだった。
派手すぎない服に身を包み、
ほんのりと化粧した長い黒髪の女の子。
(この子は……カオリさん!?)
// 私→僕・俺
「どうしたのリョウくん?
……やっぱり時間ぴったりに来たのまずかった?」
「えっ、いやそんなことないよ! ごめんごめん。」
「そう? なら良いんだけど……」
とは言ったものの、リョウくんの様子は
どう見てもおかしかった。これは絶対に何か隠してる!
「ねぇリョウくん……何か隠して……」
別に私はリョウくんの彼女でもなんでもないけれど、
リョウくんの言動が、
たとえほんの少しのことでも気になってしまう。
だから何か隠していることはないか、
と聞こうとした瞬間だった。
「あっ、あのすいません!
騒いでたのはこいつじゃなくて俺なんで……っ!」
意味不明な叫び声と共に、何故かリョウくんの家の中から
飛び出して来た少年に、私の言葉は遮られた。
その少年は明らかに今まで寝ていたというような
ボサボサな髪に、どう見ても家でくつろぐために
作られたであろうダラッとした黒いジャージを着ていた。
(え……っ、カイ大佐!?)
// 俺→僕・私
(な、なななななんでカオリちゃんがリョウん家に!?)
時間は8時35分。
目の前にいるのは親友と、一目惚れした女の子。
けれど今目が合った子は、
いつも学校で眺めてる、三編みと制服の少女じゃない。
(これは……完全にプライベート……っ!)
俺は少しだけ、見馴れない彼女の私服姿に
ニヤニヤしかけたけど、寸前で必死に押し殺した。
自重出来る俺偉い!
(って、そんなことよりなんでここに……!!
もしかして……)
俺の頭は悪い予感でいっぱいになった。
考えたくはなかったけど、どうしても考えてしまう。
「……あ、おお俺、邪魔しちゃった……かな?
……ごめん俺もう帰るわ!」
くるりと踵を返し、部屋の中へと飛び込む。
まさかリョウとカオリさんがこんな関係だったなんて。
ショックと怒りと悲しみで、
ドアを閉める手つきが荒くなってしまった。
バンッと音をたてて俺と2人を遮る壁。
もう二度と開くことはないのではないかと思うほど、
ドアの隙間からは一筋の光もこぼれない。
「俺は……馬鹿だ」
2人が付き合っていることなんか何にも知らないで、
一方的にカオリさんが好きだとか語ってた。
今考えれば、俺がカオリさんのことを話すたびに
リョウは複雑そうな顔をしていた気がする。
「そうだよな……俺ってマジ馬鹿じゃん……」
8時36分。
こんなに重い朝は初めてだ。
// 私→僕・俺
(どうしてカイ大佐がリョウくんの家から……?)
叫び声のほうに目を向けたとたん、少年と目が合った。
それはいつも図書室でみかける、
見た目であだ名をつけただけの、名前も知らない男の子。
(休日の朝からこんなラフな格好でリョウくんの家に
いるなんて……いやいやっ、遊びに来てるだけだよ……ね?)
ふと頭に浮かんだ考えを別の考えで打ち消す。
自重しろ私!!
(……でもやっぱり、ちょっと怪しいな……)
リョウくんがBL好きだってことは知ってたけど、
まさか実際にそっち気があったとは知らなかった。
(しかも……カイ大佐と……)
私もBLは嫌いじゃないけど、
そんなに興味があるわけじゃない。
ましてや目の前でこんなところを目撃してしまったら、
さすがの私でも混乱してしまう。
(それよりも……ショックだよ)
リョウくんは私のことを友達としてしか
思っていないだろうけど、私は違う。
関係を崩すのが嫌だから、
ずっと心の奥にしまって置いた思いがある。
言葉で表しきれないくらいの、彼への深い深い思い。
(リョウくん……)
私はスカートの裾を摘まんで、
うつむくことしか出来なかった。
// 僕→俺・私
僕はまだ、事の重大さに気づいていなかった。
誤解なんて、すぐに解けると思っていた。
この日を境に、あんなことが起こるなんて。
8時37分。
冷蔵庫から出した卵は、すっかり温くなっていた。
あとがき(森岡美樹さん)
あとがきの前に一つ、言っておかなければなら無い事があります。
遅くなってすいませんでしたァァァアアアアア!!!○| ̄|_
あと、初期設定を無視した箇所がいくつかあります。
本当にすいませんでしたァァァアアアアア!!!○| ̄|_
しかも両者とも大きな誤解をしたまま
終わるという酷い展開になってしまいました……。
ですがこの後の展開はすべてたつにいさんにお任せします!
The☆人任せ!!←
// こっから先はたつにいの感想
どうもたつにいです。
うん、任された!
最初のうちは「ムチャ振りキター」って思ってましたが
なんだか想像していくうちに楽しくなってきました。
次の話は、またもや長文になるかと思いますが、
まぁご愛嬌ということで……。
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