リレー小説「僕⇒俺⇒私⇒そして僕(仮)」
●原文 神村サイトさんのページに飛びます
////////////////////////////////////////////////////////////
//
// 僕⇒俺⇒私⇒そして僕(仮) 第二話
//
// 執筆者 神村サイトさん
//
「ねえ……。もし良かったらだけど……」
彼女のグリスだかリップの塗ってある唇が上下に光った。
その光をずっと目で僕は追っていた。
// 私⇒僕
「? なに? どうしたの?」
彼は首をかしげてそう言った。
いちいち動作がかわいらしい。
「んとね……」
「うん。何?」
琴桜先生とは別の人物だが、私も彼も
ファンでいる先生の新刊がでたのだ。それが口実。
なので今こうして電気街の中心にいる。
「一緒にコスイベ出てくれないかなっ……?!」
「え?」
本来私たちは同人のイベントで出会った。
イベに誘うなどは普通だ。しかし……。
即売会よりも、どっちかというとコスの方が
メインのイベントに彼を今誘っているのだ。
彼は着てくれるし、いつも無理やりに着せてるコスも
結構のりのりでやってくれている。だが……。
コスメインということはカメコも当然いるのだ。
彼はカメラで撮られることがあまり好きではないようなのだ。
それだとコスした意味というかなんというか、
コスするのに撮影しない彼は珍しい人種のように思っていた。
// 僕⇒俺
「なー。お前『ごすろり』? っての分かるか?」
「え゛っ……?!」
思わず口に含んだ液体を噴出すところであった。
僕の手にあるのはファソタオレンジである。炭酸なのである。
(まさか……君にそんな趣味……が……?!)
イキナリの質問に混乱した僕は思わずズレた思考が働く。
「大丈夫か? ……いやさ、ファッションの一環らしいんだけど、
渋谷とかいくと着てる人いるらしい……」
「ふ〜ん……」
よく見ると彼の手元には情報誌とファッション誌を
織り交ぜたような本が広げてあった。
いつもコスしてるのかさせられてるのか分からない僕だけど、
そういう単語を聞くと思わずこの前のイベで見た
どこぞのレイヤーさんが思い浮かぶ。
ゴスロリ系を着ていた人だった。
……ただ180cm超の女装レイヤーだったが……。
「あっ! もしかしてこの前の図書室の子に着せたら
かわいいとか思ってたんでしょ〜?」
思わず自虐発言を吐いてしまう。
ずきずきと体のどこかが痛み出す。
「いっ……!! そんなこと…………!!」
図星だったようだ。妄想スキルは備わっているようだ。
僕は彼にはコスをみせるわけにはいかない。
たとえば、僕がそういうのを着て、その写真とか見られたら、
いくらそれを見られて僕のこと褒めてくれるとしても、
僕はそれを望まない。
僕は男だけど女装はかまわない。
しかし彼の前での僕が変わることは僕が許していない。
僕は彼が好きだが、打ち明けてしまったら、
今までの全部が消失してしまいそうで恐くて
たまらない……。
// 僕→私
「ねっ。ねっ? どう……?」
「えっ……。ああ、いいよ」
僕は彼女に微笑みかけた。
どうせ、彼はイベにはこないだろう。
きっと、みられることはないだろう。
前髪を掌を使い、上にかき、
そこに隠されていた目玉がはじくように空を仰いだ。
見た先にあったのは
正午よりも少し夕時の方向に傾く日差しだった。
// 執筆者 神村サイトさん
あとがき?
どうもたつにいです。最初にごめんなさい。
リレー小説ページのトップで「そのまま載せる」と
書いたのに、文章を更正しまくりました。
一応、原文のリンクもおいたのでソレで許してね。
●第一話へ戻る たつにい
●第三話へ進む 森岡美樹さん
●リレー小説ページ トップへ
|